14年ほど使っていたテレビが故障したため、新型に買い替えたイダログです。
14年も一緒に暮らしていると家族同様なので、ちょっと画像が乱れたぐらいじゃ買い替えを躊躇います。
不思議なもので、画像が乱れ始めた画面を見ながら、そろそろ買い替え時かな、とか妻と話し合っていると、その翌日からは何事もなかったように元気になって、もうしばらくは大丈夫なのかな、と思わせてくれます。
同じような経験をされた方も多いと思いますが、そんな時って、テレビの中に精霊が宿っていて、廃棄されることを察して急に頑張りだしたんじゃないかな、とか思ってしまいます。
故障したと思ったらまた復活し、それが何度か繰り返され、故障と回復の間隔が徐々に短くなり、最後は乱れた画面が普通の状態になってしまうんですが、とうとう精霊も力尽きたかって思うと、何だか切なくなります。
ブラウン管テレビから薄型テレビに移行した際、画面の薄さに感動したものですが、新型は更に薄くなっていて窓ガラス並みなので、とても精霊が潜む場所はなさそうです。
愛車のハーレーは15年近く経ちますが、エンジンは頑丈そのもので故障知らずです。
多分、タトゥーまみれの素肌に、革ジャンを羽織った髭ずらの精霊が宿っているから、滅多なことでは壊れないんだと思います。
そろそろ買い替えようかなどと口走ったら、暴れだすんじゃないかと恐れています。
国産車には、きっとグレーの背広を着込んで、メガネをかけたオッサンの精霊が、社畜のように働いているから、こちらも簡単には故障しません。
私の青年期は、ビデオデッキが全盛でした。
ビデオデッキは、前面の中心部分にテープの挿入口がついていて、テープを突っ込むと自動的に吸い込んでくれるんですが、古くなってくると、吸い込んだテープを素直に吐き出してくれなくなることがありました。
レンタルビデオ、とりわけエッチなヤツを吐き出してくれないと、そりゃもう一大事です。
解剖して取り出すしか術がなくなりますので、気まぐれに吐き出さなくなったデッキの精霊をなだめながら、恐るおそるテープを挿入していたことを思い出します。
SiriとかAlexaとか、最近の家電はお話ができるので、本当に精霊が潜んでそうですが、私は、まだ彼らと対等に向き合ったことがありません。
手が離せないことがあって、三歳の孫にiPhoneを持たせていたら、ちょっと目を離した隙に、Siriと友達のように会話していました。
ホームボタン式のiPhoneの愛用者はご存じのとおり、ボタンを長押ししないとSiriは降臨してきません。
私のようなジジイは、意図せず加減を間違えた時にしか、Siriとは出会えません。
たまに降臨してくると、びっくりしてしまい、どこを押したら帰ってもらえるのかわからずパニックになってしまいますが、何故か三歳児は巧みに操作してSiriを自由に召喚しています。
私の場合、偶然呼び出すことができても、恥ずかしくて大きな声が出せないのと、活舌が悪いためか、
話しかけてもなかなか返事をしてもらえません。
ところが、未だにサ行が発音できない孫は、
「今、ツーパー(スーパー)にイマツ(います)。今日は、タムイデツネ(さむいですね)」
「ハイ。キョウノキオンハ、11ドデス」などとSiriと立派に世間話をしています。
私の言葉は聞きとってくれないのに、何故、サ行が発音できない三歳児とは会話してくれるのか解せませんが、きっと、SiriもAlexaもアメリカ出身の精霊なので、臆せずフランクに話しかける相手としか会話してくれないんでしょう。
そんな私ですが、カーナビの指示を無視して別の道を選んだりすると、元のルートに戻るようたしなめられたり、急加速で怒られたりする程度には、喋る家電からも相手にしてもらっています。