歯の浮くようなタイトルに、ちょっと引いてしまう方もいるかもしれません。
作者が中学生の頃に他界した父、その後健常者から車椅子生活になった母、
ダウン症で知的障碍の弟、という家族との関わりを中心としたエッセイです。
岸田さんのユニークな点は、ピン芸人のような軽妙な語り口にあります。
厳しい現実をストレートに綴るのではなく、先ずは、皆を”笑かそう”とします。
私の勝手な解釈ですが、厳しい現実に直面しながらおちゃらけてみせるのは、
楽観的だった父親から受け継いだ生来のサービス精神もあるのでしょうが、
一つには、
厳しい現実を笑いに変え、それを文章に綴って客観視することで、
少しでも現実を明るいものに変えていきたいっていう作者の思い、
あるいは、自分自身が現実に圧し潰されないための必殺技なのかな、と思えます。
もう一つは、
健常者や健常者中心の社会に対し、露骨に福祉を押し付けたくない、
っていう、作者なりの優しさや思いやりの表れが、”笑い”なのかもしれません。
家族や福祉に関するエッセイだけでなく、普通に笑えるバカ話も満載なので、
気持ちを軽くしたい方にはお薦めのエッセイです。