今週、シドニー・ポワチエの訃報が報じられていました。
氏の功績や評価にはまったく異論ありませんが、
本稿では、報道では触れられていない、氏の妻、
ジョアンナ・シムカスの代表作「冒険者たち」について書きます。
ある一定の年齢層以上の映画ファンにとって、シムカスは特別な存在であり、
「冒険者たち」は、彼女を、その10年にも満たない短いキャリアの中で、
最も輝かせた映画です。
本作での瑞々しい存在感を携えながら、
ポワチエとの結婚を機に表舞台から消えてしまったことにより、
シムカスは伝説の域に入って行きました。
伝説と言っても、大女優とかアイコンとか言う形容とはちょっと違い、
その名を耳にすると胸が締め付けられるような、
さり気なく、儚い佇まいを纏った女優でした。
作品としても”不朽の”という枕詞が相応しい名作です。
アロン・ドロン、リノ・バンチュラ、シムカスによる、
男2×女1の友情と寸止めの恋愛感情が瑞々しく描かれていて、
女性を交えた友情物語の原型となったような映画とも評されています。
それぞれに夢破れた3人が、沈没船に眠る財宝を引き上げるため、
危険な冒険に挑む物語ですが、
犯罪組織による横やりが入るため、クライムサスペンスの要素もはらんでいます。
50年以上前の映画ですが、青春の一コマは、どの時代から切り取ってきても、
同じような空気感をたたえていることがわかります。
ドロンやシムカスにとっても、
そんな瑞々しい役柄を演じらる機会は、キャリアの中でもほんの短い期間しかなかったでしょうから、
奇跡のような巡り合わせによって生まれた名作だったのかもしれません。
私にとっては、未だに見返すほどの、オールタイムベストの一つです。