不夜島(ナイトランド) / 荻堂顕

画像引用:Amazon

デビュー作から推している荻堂氏の新作です。

今回の作品は、サイバーパンクという、もともとマイナーなSF小説の中でも、さらにマイナーなジャンルになりますので、自信を持ってお勧めはできないのですが、帯の推薦文に「サイバーパンクに涙する日が来るとは」と書かれているのが、あながち的外れではないほど、熱い男たちの命を懸けた戦いに胸を揺さぶられました。

戦争に敗れ、米軍の占領下となった与那国島と台湾が舞台になりますが、史実は頭から無視してください。
戦後の荒廃のまま時が止まってしまったような与那国島(ナイトランド)ですが、サイバーテクノロジーだけは異様に進歩しているという設定です。
全身をサイボーグ化された密貿易人の主人公は、悲しい過去を清算することを夢見ながら、米国のとある組織の手先として、冷戦の行方を左右するほどの”ブツ”を探し求め、米軍、国民党軍、中国共産党軍との戦いに身を投じていきます。

荒唐無稽な設定なので、まずはそんな世界に入り込めるかどうかですが、一旦入り込めたら、主人公以外も敵役含め、魅力的なキャラクターばかりなので、容易に感情移入できるはずです。

それぞれの信念で戦う男たちの未来は決して明るいものではありませんが、負けるとわかっていても戦わざるを得ない熱い思いが感動を誘います。
希望とも絶望とも言えない結末には、静謐さが漂い、戦いを終えた男たちの心中を思うと、確かに涙せずにはおれない作品です。

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