ワイルド・ソウル / 垣根涼介

画像引用:Amazon

作者の垣根涼介氏のことは、本作がきっかけで最近ファンになりました。

戦後の南米への日本人移民政策の恥部を抉り出しながら、一級のクライムサスペンスを作り上げています。
誰もが楽しめるエンターテインメント小説の傑作です。

前半は、史実をベースにした移民たちの悲劇が語られます。
それが熱い男たちによる復讐劇の導入部分になっていますが、日本にこのような歴史があったことを知り、現代史への無知が恥じる一方、主人公たちと同じように、このような不都合な歴史を消し去った日本政府に対して憤りを覚えます。
主人公たちへ感情移入するには避けて通れない、効果的な導入部です。

男たちの犯す犯罪はテロですが、復讐と言っても決して陰湿さを感じさせません。
これは、垣根氏が魅力的な漢(おとこ)を描くことに長けているからだと思います。

物語は緊張感を伴いながら、多少の悲劇も生みますが、最後は、胸のすくようなカタルシスを味わわせてくれます。

タイトルとURLをコピーしました