1984年制作なので、すでに40年の時を経た作品です。
長い時を経てもなお、古さを感じさせるどころか、未だに感性を強く揺さぶる作品は沢山ありますが、久しぶりに鑑賞した本作もそのような不朽の名作の一つです。
ニコラス・ケイジ扮するやんちゃなアルとマシューモディーン扮する繊細で内向的なバーディーが、高校時代に出会うところから物語は始まります。
繊細なバーディーは、鳥のように空を飛ぶことを夢見るばかりで、外の世界とうまく折り合いをつけることができません。
そんなバーディーにとって、偏見を抱くことなくつきあってくれるアルは唯一の友です。
しかしやがて、アルは、いつまでも夢見がちで外の世界に踏み出そうとしないバーディーへ苛立ちを覚え、二人の友情にもひびが入ります。
すれ違いを抱えたまま、二人はベトナムに従軍し、アルは体に深い傷を、バーディーは心に深い傷を負い帰還します。
以前にも増して心を閉ざし、アルにさえ言葉を発しないバーディーの心をどうにかして開こうとするアルです。
ピーター・ガブリエルの音楽を背景に、不穏な緊張感を湛えながら、アルとバーディーの心と心のぶつかり合いが展開します。
バーディーを無理にでも外の世界に呼び戻そうとするアルですが、実は、アル自身もバーディー同様外の世界では暮らせないほど心が傷つき、暗闇の中を彷徨っていることに気づきます。
闇の中で、お互い独りぼっちだったアルとバーディーは、そこでようやく心が通じあいますが、決して闇から抜け出せたわけではありません。
これから二人がどこへ向かって行くのかはわからないまま、闇の中で友と再会できたことだけを唯一の希望に、物語は幕を閉じます。
当時20歳そこそこだったケイジの瑞々しい演技と相まって、静謐な癒しを与えてくれる名作です。