”ババヤガ”という言葉は、「ジョン・ウィック」の中で頻繁に聞かれます。
字幕では”闇の男”とでてたように記憶していますが、
本書では”鬼婆”みたいな意味で使われています。
ただ、”ババヤガ”という言葉自体は、本文のどこにも現れてきません。
暴力の発露でしか生を実感できない女が、
ヤクザの父親の暴力に守られながらも、
心が壊死してしまったかのような少女のボディーガードとして雇われる話です。
女性二人が主人公なのですが、甘い香りは微塵も感じられません。
暴力と血と骨の砕ける音に満ち溢れています。
話の展開が凝っていて、油断すると作者の術中に嵌ってしまいます。
映画のような場面展開は斬新で、うまいなぁ、と感心してしまいます。
例えが古すぎると言われそうですが、
「傷だらけの天使」を女性二人に置き換えたような感じもします。
女性を主人公にした物語の新しい形を見た思いです。
フェミニズムという陳腐な形容を押し付けると、
ぶん殴られそうな迫力があります。
ちなみに、作者は女性です。
ラストシーン、「傷だらけの天使」みたいな無様なリリシズムに心が震えます。