浅野いにお氏原作による漫画のアニメ版です。
原作とは異なるラストが用意された映画版も公開されていますが、AmazonやNetflixで配信されているアニメシリーズは原作に準拠しています。
ある日、東京上空に異星人の巨大宇宙船が飛来しますが、宇宙船は東京の空に居座ったまま三年間何も起こりません。
人々もそんな非日常に慣れてしまい、主人公の二人を含む女子高生の仲良しグループは相変わらずおちゃらけた日常を続けます。
地球規模の非日常が同居しながら、何も起こらない日常は、むしろ不穏な空気を漂わせます。
何も起こらないことによる疑心暗鬼が人間の心を狂わせ、集団的正義感が異星人への憎悪を生みます。
相手(異星人)の意図がわからず、コミュニケーションもとれないことから生じる恐怖と排斥感情は、移民排斥を思い起こさせます。
無抵抗の異星人を殺戮する人間の姿は、極限状態で露になる人間の異常性を象徴しているようです。
タイムループや並行世界など、ともすれば”何でもあり”で、ご都合主義に陥りそうなテーマも、きちんと整理されています。
ややこしくなるので深くは触れませんが、「ドラえもん」の世界観ともオーバーラップしており、多重構造で一筋縄ではいかない作品です。
ナンセンスアニメを装いながら、今日的なテーマを残酷に投げかけてくる、常識はずれの傑作アニメですが、最終的には、身近にいる大切な人を思いやる心が、全てを救ってくれる可能性を秘めていることを示唆しているように思えます。
主人公二人の声を演じた幾多りらさんとあのちゃんの声の演技が秀逸です。
特にあのちゃんは、時にメディア上でのあけすけな物言いが反感を招くこともありますが、本作での声の演技は中毒性を喚起するほど見事です。