コリン・ファースとスタンリー・トゥッチが同性カップルを演じています。
病を得たトゥッチ演じる作家と、ファース演じるピアニストの、キャンピングカーによる二人旅を軸に物語は展開していきます。
車中での二人の会話が中心で、起伏に富んだ展開はありませんが、相手を思いやるが故にすれ違う、お互いの気持ちの寄り添いと葛藤が丁寧に描かれています。
絵画のように美しいイギリスの湖水地方を背景に、微妙な表情や視線の動きで、心情を表現する二人の演技が見事です。
カップルの片方が病を得て、もはや二人は添い遂げられないかもしれない、という愛の終焉を描く作品は、枚挙にいとまがありませんが、本作は、同姓のカップルを通して描いている点が異質といえば異質です。
しかし、決して奇をてらった演出ではありません。
もし同じストーリーを異性のカップルが演じていたなら、”人間愛”ではなく”男女間の恋愛”の話になっていたかもしれません。
同性のカップルを主役に据えたことにより、人が人と出会い、愛を育み、しかし最後は必ず別れが訪れるという、生きとし生けるものの宿命のようなものが、年齢性別を問わず、普遍的なテーマとして胸に迫ってきます。
途中、短時間ながら、二人が家族や友人たちと再会するシーンがありますが、そこでの、家族、友人、老若のふれあいのエピソードが、短いながらも深い感動を呼び起こしているのもそのためです。
抑制のとれた演技と演出が、深い感動を与えてくれる良作です。