普段は記事しないようなメジャーな映画ですが、なかなかの良い作品でした。
20年前、トビー・マグワイアの初代スパイダーマンを見た時、優柔不断な悩み多きヒーローにじれったく感じながらも、新鮮なヒーロー像に魅せられてしまいました。
その後、アンドリュー・ガーフィールドも同様なコンセプトを引き継ぎましたが、同シリーズがMCUの仲間入りをしてからは、徐々に明るく若々しい世界観に変化してきたようです。
本作は、前作「ファー・フロム・ホーム」でややシリアスな終わり方をしたところからの再開で、立ち上がりこそ深刻さを湛えていたものの、すぐにMCUのスパイダーマンらしい、ユーモアとドタバタが始まります。
ところが、トム・ホランドが青臭ささを発揮し始めるところから、ドタバタでは済まなくなり、悲劇の様相を呈してきます。
そこに、初代、二代がマルチバースから現れ、従来からのテーマである、悩み多きヒーロー像が蘇ってきます。
トム・ホランドのスパイダーマンは、力のある者が無責任にその力を行使すれば、必ず悲劇を招くこと(=With great power comes great responsibility)を思い知らされますが、それでも青臭い理想論を貫けるかどうかが本作のテーマであり、MCUとは一味違う、SONYピクチャーズが描いてきたスパイダーマンの原点でもあります。
「親愛なる隣人」という本来のコンセプトに立ち返ったことも、本作がMCUとは一線を画すヒーロー映画であることを再確認させてくれます。
切なく、しんみりとしたラストが心に沁みる、”青春映画”の傑作です。