史実を基にしている作品と知って驚きました。
ナチスドイツ統制下では、全ての国民が洗脳されていたとばかり思い込んでいましたが、本作に登場するような反体制勢力もいたんです。
実際は、勢力と呼べるような組織的な動きではなく、ジャズやアメリカ文化に憧れる不良少年たち(歴史上「スウィング・ボーイ」と呼ばれた一団)の、命を懸けた放蕩の物語です。
明確なレジスタンスや反体制とは違い、不良少年たちの私的な反抗にすぎませんが、自由を求める彼らにとっては、ユダヤ人やアーリア人の区別はなく、皆がジャズの下で平等でした。
そんな不良少年たちの生き様は、傲慢で甘ったれているようにも見えますが、ナチズムの下では清廉な輝きを放っています。
ジャズのリズムのように言葉が紡がれ、テンポの良い文章は、まるで行間からメロディーが聞こえてくるような、独特な魅力を持っています。
史実なのに、映画のようにロマンチックな物語です。