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今から約170年前のユタ戦争を題材にした、Netflixオリジナルの西部劇です。
合衆国政府とモルモン教徒の内戦(ユタ戦争)に翻弄される、ネイティブアメリカンや開拓者の姿を描いた骨太な群像劇です。
迫真の戦闘シーンも目を引きますが、何よりそこに至るまでの不穏な緊張感の高まりには、息苦しくなるほど胸を締め付けられます。
ユタ戦争を背景に、元夫に子ども託すため逃避行を続ける母子、行きがかり上案内役となったネイティブの部落で育った白人のガンマン(テイラー・キッチュの演技が光っています)、父親の虐待から逃れ一行に加わったネイティブの少女、の4人による苦難の旅路が描かれます。
表題に掲げられたアメリカの夜明けは、暴力に彩られています。
アメリカ人にとっての自由や独立といった崇高な理念は、暴力というシンプルな手段によって実現されてきたことがわかる作品です。
ひ弱な良心や優しさが、暴力によってひねりつぶされる170年前のアメリカと、リベラリズムが保守主義によって駆逐されている現在のアメリカの姿が重なります。
一方で、容赦なく白人の頭の皮を剝ぐネイティブアメリカンの残虐さが、崇高な精神性で裏打ちされている様に、暴力で自由と独立を勝ち取ろうとする開拓者の信念が、アメリカの民主主義を育んできたとも言えます。
自ら暴力にまみれながらも、強い心を失わず、過酷な旅路を生き残った者たちからは、善悪を超えた人間の気高さが感じられます。