
朝井リョウ氏による、2019年発刊、全六編の短編集です。
どの短編の主人公も人生に閉塞感を抱いています。
日常に潜む死を意識することで、生への実感を得ようともがく者。
信念を貫けず生きてきたことへの後ろめたさを抱えながらも、生き続ける覚悟を決める者。
you tubeの動画に支えられながら、虚しく不安定な日々と向き合おうとする者。
等など、一見すると負け組とも言える人々の苦闘が描かれています。
人間の心の深淵をのぞき込みながらも、醜さを抉り出すのではなく、共感を引きだしてくれるのが朝井氏の真骨頂です。
最後の短編で描かれているのは、幼い頃から男より一段低く見られ、一見すると外れくじばかり引かされてきたような女性の人生です。
しかし、当たりくじを引いた人々(特に男たち)の人生が必ずしも恵まれたものになるわけではなく、外れくじを引きながらも、強い意志でしっかり生きてきた主人公の人生の方が、実際には、豊かな生の実感をもたらしてくれます。
苦しい人生ばかりが描かれていますが、読み終えた後「どうしても生きてる」というタイトルの意味を肯定的に感じさせてくれる作品です。