南北戦争終結直後、新聞の読み聞かせで各地を回るトム・ハンクス扮する元南軍大尉が、幼い頃インディアンに攫われその後解放された少女を、唯一の親族の元に送り届ける話です。
原題は、「News of the world」です。
この映画を傑作たらしめているのは、ストーリの背景にあります。
南北戦争によって分断された人々の心が、未だ融和されていない国土は今の米国とそっくりです。
そんな中、ハンクス扮するキッド大尉は、多くの人に世界の姿を正しく知らせ、
人々の閉ざされた心を解放しようとしているように見えます。
フェイクニュースで人の心を操ろうとする者にには命の危険を顧みず抵抗し、
あくまでも真実の世界を伝えようとします。
国家の分断をよそに、打ち捨てられた先住民や移民の姿も描かれます。
愛する者との別れもままならない疫病への無力感も描かれています。
分断や憎しみや、理不尽な災厄に対しては、結局周囲への優しさで打ち勝つしかない、
ということを伝えているように思える作品です。
今日の世界と酷似した多くのテーマを描くには、
2時間の尺は短か過ぎたかもしれません。
やや描き方が浅くなっているのは否めませんが、
それもでハンクスの誠実な演技は、作品の思いを伝えるには十分でした。
Netflixオリジナル作品の傑作の一つと思います。