鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎

画像引用:Amazon

水木しげる生誕100周年を記念して制作された作品だそうです。

水木氏の原作を忠実にアニメ化したものではなく、「墓場鬼太郎」をベースにした二次創作の位置づけです。
一方で、鬼太郎が、幽霊族最後の生き残りである父と母の子として、墓場に埋葬された母から生まれたという基本設定はきちんと踏襲しながら、あくまでも怪奇譚として書かれた「墓場鬼太郎」の物語が、現在の「ゲゲゲの鬼太郎」に上手く繋がるような構成になっています。

横溝正史の作品を彷彿とさせるような外界から閉ざされた山村を舞台に、製薬会社の野心的な社員の水木と行方不明の妻を探す鬼太郎の父が、バディのような関係を結んで、村で作られる秘薬の秘密を暴いていく物語です。
人間の欲の犠牲になった村人たちや幽霊族の存在が暴かれるにつれ、人間の醜さが浮き彫りになります。
アニメシリーズの鬼太郎も、人間の愚かさを浮き彫りにするような話が多いのですが、本作は、まさにその点が主題になっています。

また、戦争帰りで人間不信の水木は、役名のとおり原作者を投影しているようにも見えますので、ゲゲゲの鬼太郎が、物語の中の幽霊族の父と人間に対する辛辣な批判を投げかける作者水木氏の二人の父親から生み出されたことを暗示しているようでもあります。

テレビアニメよりもホラー色が強く、人間の醜さもより際立っていますが、一方で異形の存在の優しい眼差しも感じさせる、オトナ向けアニメの佳作です。

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