海賊と呼ばれた男 / 百田尚樹

画像引用:Amazon

岡田准一さん主演の映画でも有名なので、あらすじについて語る必要はないと思いますが、
出光興産の創業者出光佐三の生涯を綴った著作です。

本書での主人公は、国岡商店の国岡鐡造となっていますが、実名で登場する人物も多数おり、
エピソードも概ね史実に基づいています。

百田氏は、思想信条において批判の多い作家ですが、小説の腕が一流なのは間違いないと思います。

私は、本書をビジネス書として読みましたが、本屋大賞を受賞したほどですから、
娯楽小説としての面白さが勝っているのは否めません。

国岡鐡造、すなわち出光佐三は、その強い個性と信念を貫く力があだになり、
当局や同業者との軋轢が絶えません。
こでれもか、というくらい次から次に試練が襲い掛かり、
もはやこれまでとあきらめかけることもありますが、
最終的には「ダメなら乞食をやる」覚悟で突破していきます。

今の時代のビジネスパーソンにとって、
出光佐三の凄まじい生き方からビジネスのヒントを得るのは難しいのかもしれませんが、
ビジネスに限らず、何事も決してあきらめない、
逃げない強い心を持ち続けることの大切さは学ぶことができます。

また、社員を家族と見做す独特な経営体制のもと、
社員は危険を顧みず、嬉々として死地に飛び込んでいきますが、
現代人の感覚では、やりがい搾取やブラック企業と紙一重とも言えます。

しかし、国力が衰退し、世界から取り残されつつある現在の日本の姿をみるにつけ、
国岡商店の在り様は、惰弱な日本へのアンチテーゼのようでもあります。

また、近代史の一幕としても興味深いエピソードに溢れており、
特に「日章丸事件」のくだりは、史実とは思えないほどドラマティックです。
一方で、武力侵略こそなかったものの、欧米が発展途上国を搾取し続けてきた事実は、
今のウクライナ問題の根底にある大国の理論を彷彿とさせます。

ちなみに、百田氏の著作で私が最もお気に入りなのは「風の中のマリア」です。
ビジネスとはまったく関係ありませんが、こちらはロマンティックで感動的な佳作です。

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