
第65回メフィスト賞受賞作です、
飲酒運転の車に跳ねられ死亡したはずのクラスの人気者「山田」が、校内放送のスピーカーを通して、クラスメートと声だけで交流する話です。
序盤は、「山田」とクラスメートの間抜けな会話の応酬が、コントのように楽しませてくれます。
それだけだと、ただのほのぼのとしたファンタジーですが、それだけ終わらないのが本作の凄みです。
歳をとり、成長し変わりゆくクラスメートたち、永遠に歳をとらず、声だけはクラスの人気者のままの「山田」
大人になることと、青春の一コマに置き去りにされることの間に、徐々にズレが生じてきます。
中盤以降に明かされる、人気者「山田」の心情の切なさとともに、ほろ苦い青春を瑞々しく描きだす佳作です。