われら闇より天を見る / クリス・ウィタカー

画像引用:Amazon

ミステリーの範疇に入れられていますが、テーマは贖罪と自己犠牲です。

そんな重たいテーマを描く520ページの大作ですから、腰が引けてしまいそうですが、一旦ハマると、時間を忘れて読み進んでいける、高いエンターテインメント性も兼ね備えた傑作です。

海に面したカリフォルニア州の小さな町に、過去の過ちにより30年の刑期を務めた男(ヴィンセント)が帰還したことで、町の人々の人生が悲劇に向かって動き出していきます。

ヴィンセントの元恋人スター、親友で警察署長(といっても助手が一人いるだけ)のウォークと彼の元恋人で弁護士のマーサは、ヴィンセントが犯した過ちにより、心に傷を負い、今も苦闘しています。

そして、悲劇の中心に放り込まれ、闇に引き込まれそうになっているのが、13歳になるスターの娘ダッチェスです。
精神的に不安定な母(スター)と純粋な魂を持った弟を守るため、少女は自らを無法者になぞらえ、世間と闘い続けています。

闇から逃れられない大人たちが、闇に落ちようとしている少女ダッチェスを光のあたる世界に引き戻すため、再び悲劇と向き合い、自己犠牲により贖罪を果たそうとする姿が胸に迫ります。

劇的な結末で幕を閉じることに固執したためか、途中の展開にやや強引さが感じられるものの、原題「WE BEGIN AT THE END」(我々は終わりから始める)が表しているように、少女に未来を与えるため、悲劇を完結させるしかなかった大人たちと、あらたな一歩を歩みだそうとする少女の姿に、心を揺さぶられます。

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